【書評】「若者はかわいそう」論のウソ(海老原嗣生)

「若者はかわいそう」論のウソ

「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)
海老原 嗣生
扶桑社
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■目次
第一章 「若者かわいそう」ベストセラーを論駁する
第二章 流布された「怪しいデータ」を検証する
第三章 対談・教育と雇用の現場から
第四章 問題の本丸は何か? 3つの地殻変動をどう吸収するか
最終章 錯綜した社会問題に解を!

■本の概要(出版社の紹介文より)
「若者の3人に1人は貧しい非正規社員」「終身雇用と年功序列は崩壊した」「派遣は貧困の元凶」「若者の安月給は“搾取”のせい」「新卒就活で敗れたら、リベンジは一生ムリ」……は、全部ウソ! 本書は、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人・海老沢康生”のモデルにもなった海老原嗣生氏が、得意のデータ分析と実地調査をもとに、そんな「若者はかわいそう」論をバッサリ斬る。ロスジェネ、就職難の学生、その上司・親世代にとっての必読の書。

■ポイント
1.若者が安月給なのは「搾取」ではない

昔から超大企業といえども新卒総合職入社組が40歳になるころに同じ会社に残存している率は8割弱だ。とすると、2割の人は信託したまま、その分を返してもらわず退職している。こうした退蔵益も加味すると、取り立てて裾野の広いピラミッド型人員構成でなくても、熟年者は若年者のゆうに2倍以上の給与レベルを保てることになる。(p.29)

ベンチャー企業などでは、この信託部分はないので、きちんと対価を還元しようとする風潮にありますね。結局、ここで述べられているシステム自体が、年金と同じシステムなので、将来破綻することは確かだし、今や企業の寿命が勤務年数より少ない変化に富む時代。このシステムだと、若者が搾取されていることは否めないと思う。ただ、ベンチャーであれ、大きな企業であれ、その企業の稼ぎ頭の事業を作った人や成長の軌道に乗せた人はその分の報酬をもらってもいいと思うし、その分、若者の給与が安くなるのは仕方のないことだと思う。

2.若者よ、むやみに転職するな

今の仕事は15年後にきっと役に立つ。能力蓄積に関するステップは、昔とあまり変わっていない。その会談が目に見えないからわかりにくいが、大手のスローライフはけっこういいものだ。(p.85)

あくまでも大手の場合、なりたい自分がどこにあるかによっても立場は異なるし、そういうスローライフが許せない場合は、飛び出ることも必要だと思う。必ずしも、自分の今いる企業がこのタイプに当てはまるというわけではないし、逆にそういう企業の方が少ないと思う。ただ、転職する場合は、とどまって得られるものときちんと比較するべきだし、安易に決断すべきではないことは確か。

3.増えすぎた大学生が、就職評がを厚くする

決して大企業は採用を減らしてはいない。大学生が増えすぎたことが第一の問題であり、第二の問題は、中堅中小企業や販売・サービス業などを志望しない、という嗜好の問題がある。そして、第三の問題。こちらは、「大学無試験化」により、小中学校の基礎知識さえ習得していない社会人不適格な大学生の増大。これでは大手の採用試験をパスできない。(p.213)

大学の定員増の問題。現代でいえば、公認会計士合格者や司法試験合格者の就職難と同様、国策の失敗ですね。そして、その影響が若者に色濃く出てしまう結果となる。この辺は納得ですね。就職難という数値も大手を目指した場合のケースが多いし、ハローワークに行けば、仕事がないわけではない、逆に、空きができた就職枠に海外の労働者が流入してきていることは、外食やコンビニなどの店に行けば、目の当たりにすることができる。結局、若者が苦労しなくなっている、苦労して成果を出している人は、今も昔も変わらない、というか、逆にITを駆使して起業するなどの選択肢が増えたり、さまざまなメディアの発達により、今まで手の届かなかったことも実現可能になっているので、タイトルにあるかわいそう論の嘘については、すごく納得できた。

■感想
さまざまな書籍やニュースで話題になっている出来事に対して、きちんとしたデータの読み方や主張をしているという意味で、データの読み方を検証するという題材としてはいいと思うけど、著者の主張は、時代遅れな感じが否めない。発刊後1年半が経過しているからかもしれないが、その辺は、意識して読まないと、おかしな方向に持って行かれる恐れがある。時代錯誤感があるので、言っていることと現在起こっていることの差異が生じているため、あまり内容に説得力が感じられなかった。

■余談
著者の海老原嗣生さんは、ドラマ化もされた漫画エンゼルバンクの作中人物“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデルの方ですね。

■関連情報
エンゼルバンク


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