【書評】脳を創る読書 なぜ「紙の本」が人にとって必要なのか(酒井邦嘉)

脳を創る読書 なぜ「紙の本」が人にとって必要なのか

脳を創る読書
脳を創る読書

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酒井 邦嘉
実業之日本社
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■目次
1 読書は脳の想像力を高める
2 脳の特性と不思議を知る
3 書く力・読む力はどうすれば鍛えられるのか
4 紙の本と電子書籍は何がどう違うか
5 紙の本と電子書籍の使い分けが大切

■本の概要(出版社の紹介文より)
電子書籍化が進む今、やはり従来の「紙の本」がよいのか、それとも、時代の当然の要請として「電子書籍」がよいのか? これについては、意見が分かれるところである。本書では、『言語脳科学』の第一人者が、その問いに学究的な視点から真摯に答えている。脳の特性と不思議を説き、読書が脳に与える影響に言及しつつ、実際に「紙の本」と「電子書籍」を使って読書した場合の脳の反応について解説する。紙の本も電子書籍も、結局は「使う側」の意識がカギを握っているとしながらも、著者が人にとっての「紙の本」の重要性を強調し、加えて、学校教育の一つの提案である「電子教科書」について、その安易な移行に警鐘を鳴らす理由とは? 「紙の本」の風合い・質感・活字の存在感をこよなく愛する人も、「電子書籍」の簡便さに魅了されている人も必読の、脳と読書の意外な関係。

■ポイント
1.受け取る「入力」の情報量が少ないほど、脳は想像して補う

ここでいう「想像力」とは、平たく言えば、「自分の言葉で考える」ということだ。脳の中でこの想像力を担うのは、前述の「言語野」であり、多くの場合、4つの領域を総動員して考えることになると予想される。(p.21)

技術の進歩によって、脳が退化していることは話題になっていますよね。文字<音声<映像という形で情報量が増える分、それを補う想像力という面で、どんどん退化していると言われていますね。また、PCによる漢字の変換によって漢字が覚えられなくなったり、記憶媒体の発達によって記憶すべき情報が低減するなど、便利ではあるけど、アタマを使わなくなっている、映像などの場合は流れに任せて見るといったことが当たり前になりつつありますよね。

2.読書量が多ければ多いほど、言語能力は鍛えられる

読書は、足りない情報を想像力で補って、曖昧なところを解決しながら自分のものにしていく過程だから、常に言語能力が鍛えられていることは間違いない。(p.122)

文章が読みやすい人は、そういう意味でも読書家なのかもしれませんね。著者は大学院生に論文指導を行っているが、そういう能力の欠如は如実に感じているとのこと。記憶することが必要だった時代から検索能力が必要な時代に移ったように、実務上で必要とされる能力は時代とともに変化していくものだと思いますが、失ってはならない能力?は失わずに保ち続ける意味でも、どういう訓練は必要なのかも?ですね。

3.なぜ画面上で見落とした誤字が紙の上では見つかるのか

それぞれの文字に対して常に空間的な手がかりが得られるので、まず文章を読み飛ばす可能性が減り、注意を向ける範囲をサーチライトのように確実に移動できるようになる。さらに、紙の汚れや印刷のむらなどがあれば注意を引くので、そのあたりに誤植があれば目に飛び込んでくることになる。(p.134)

注意できるポイントが多いということですね。実際に、例題のようなものがあるのですが、なるほどと感じるような内容でした。まぁ、紙でも電子でも精度を上げるには前提となる能力を身につけるという意味では訓練も必要なんでしょうが……。いろいろと議論はされているものの、結局の所、紙→デジタルの過程を経ているために起こることなのかも?という考え方もありますよね。もともとデジタルしかない時代に生きる世代であれば、比較することなくデジタルで処理を行うわけで、そういったネイティブな人にどのように写るのか?ということも考えないといけないかな?と。

■感想
出版社が出す、紙の本と電子の本、どちらがいいか? ちょっとバイアスがかかっているような気もしないでもないですが、紙と電子どちらがいいかという議論は、最後の方だけで、インプットする情報、アウトプットする情報と脳の関係について綴られているのが大部分でした。確かに、なるほどと思うのですが、最終的には、読者の使い方次第という結論なんですよね。そんな使い方次第だと言われるなか、大手出版社では自炊に対して制限を設けるなど、なんだか自身が電子化に進む努力もしないで、おかしな方向に向かっている現状ですが、今後、どうなっていくんでしょうね。

■余談
もっと電子化が進んでいれば問題ないのですが、現状だと、わざわざ自炊する必要があるため、それだったら紙でいいやと想ってしまいますよね。コミックなど、電子版で1冊100円とかなら、すごくいいのですが……。

■関連情報
東京大学 大学院総合文化研究科 相関基礎科学系 酒井研


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